「日本のカメラを世界に売る」と言うと聞こえはいいですが、実際のところ——どの国の人が買ってくれているか、正確に答えられる人は意外と少ないです。なんとなく「アメリカ?ヨーロッパ?」というイメージはあっても、データで見たことがある人はほとんどいません。
そこで今回は、ぼくの過去12ヶ月・573件の実販売データから、「日本のカメラはどの国が買っているのか」を販売先国ランキングで公開します。件数だけでなく、国ごとの平均売価・利益率まで実数で出すので、これから発送設定や市場戦略を考える人の一次データとして使えるはずです。
この記事を読み終わる頃には、「日本のカメラは漠然と”世界”に売れている」という曖昧なイメージが、「アメリカを中心に、英語圏が主力で、こういう国にこう売れている」という具体的な地図に変わっているはずです。それでは見ていきましょう。
1. このデータの前提
集計したのは2025年6月〜2026年5月の実販売573件。配送先の国が記録されているeBayの実取引データを、国ごとに件数・平均売価(USD)・平均利益率(%)で集計しました。販売先は全部で43カ国に及びます。世界中に買い手がいるのが、日本の中古カメラ市場の面白いところです。なお、ここで言う「販売数」はカメラボディ・レンズ・アクセサリを含む実取引ベースです。金額は手の内になりすぎる累計利益などは伏せ、件数・平均売価・利益率という”傾向が分かる範囲”で公開しています。
ちなみに43カ国という数字には、年に1〜2件しか取引のない国もたくさん含まれます。世界地図を塗りつぶすように、思いがけない国からポンと注文が入るのも輸出の醍醐味です。とはいえ、利益の柱になるのは一部の主力国。そこを正しく把握することが運用の肝になります。
2. 日本のカメラを買う国 ランキング(実数)
まずは結論のランキングです。販売件数の多い順に並べました。
| 国 | 販売数 | 構成比 | 平均売価 | 平均利益率 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 🇺🇸 | アメリカ | 246件 | 42.9% | $1,189 | 23.3% |
| 🇬🇧 | イギリス | 48件 | 8.4% | $916 | 34.1% |
| 🇨🇦 | カナダ | 31件 | 5.4% | $1,397 | 25.2% |
| 🇩🇪 | ドイツ | 31件 | 5.4% | $881 | 21.5% |
| 🇯🇵 | 日本(国内) | 27件 | 4.7% | $1,720 | 21.5% |
| 🇦🇺 | オーストラリア | 26件 | 4.5% | $1,062 | 24.2% |
| 🇰🇷 | 韓国 | 16件 | 2.8% | $1,059 | 23.4% |
| 🇹🇼 | 台湾 | 14件 | 2.4% | $907 | ※ |
| 🇫🇷 | フランス | 13件 | 2.3% | $663 | 23.1% |
| 🇸🇬 | シンガポール | 11件 | 1.9% | $1,122 | 31.0% |
| 🇵🇱 | ポーランド | 11件 | 1.9% | $901 | 24.2% |
| 🇨🇭 | スイス | 9件 | 1.6% | $932 | 15.2% |
※台湾は販売数が少なく、一部の高利益商品で数字が大きく振れるため利益率は参考値として伏せています。
このデータは、ぼくが「なんとなく」で発送設定や出品をしていた頃には見えていなかったものです。実際に集計してみて初めて、「ここまで偏っているのか」と驚きました。感覚で語られがちな”海外で売れる”を、数字で具体的にしていきます。
3. アメリカが圧倒的(全体の42.9%)
最大の発見は、アメリカ1国で全体の42.9%を占めること。2位イギリス(8.4%)以下を大きく引き離す、まさに”一強”です。日本の中古カメラ輸出において、アメリカ市場を外して考えることはできません。2位のイギリス8.4%、3位カナダ・4位ドイツが各5.4%と続きますが、アメリカとの差は歴然です。ピラミッドの頂点に巨大な一強がいて、その下に主力国が連なる——これが日本のカメラ輸出の市場構造だと、データがはっきり示しています。
理由はシンプルで、市場のパイが圧倒的に大きいから。フィルムカメラ文化が根強く、コレクターも実用ユーザーも分厚い。平均売価も$1,189と高く、量・単価ともに主力市場です。フィルムカメラのリバイバル人気も、もともとはアメリカや欧州の若い世代から火がつきました。SNSでフィルムの作例が共有され、ヴィンテージのカメラに価値が見直される——その需要の中心地が、やはりアメリカなのです。出品設定やタイトルは、まずアメリカのバイヤーを意識して作るのが正解だと、このデータが裏付けています。
具体的には、英語タイトルの語順や表現はアメリカで検索されやすい形を優先する、価格は米ドル基準で相場を見る、関税まわりの設定を丁寧にする——といった”アメリカ最適化”が効いてきます。1国で4割を占める市場を取りこぼさないことが、売上の土台になります。
逆に、アメリカで評価を落とすと売上の4割が揺らぐ、ということでもあります。だからこそ主力市場のバイヤーには特に丁寧に——発送を確実にし、問い合わせには誠実に対応する。主力市場での信頼の積み重ねが、検索でも有利に働き、さらに売れるという好循環を生みます。
4. 上位は英語圏で6割を占める
もう一つ重要なのが、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアの英語圏4カ国だけで、全体の約61%を占めること。つまり、売上の6割は英語のバイヤー相手の取引です。これは裏を返せば、英語圏向けの出品を一つ整えれば、その改善が売上の6割に効くということ。労力対効果がとても高い投資先だと分かります。
「じゃあ英語ができないと無理?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。今はAIを使えば、英語のタイトル作成もメッセージ対応も十分こなせます(詳しくは eBay輸出に英語力はいらない)。大事なのは、主力が英語圏だと知ったうえで、英語の出品・対応を整えることです。
逆に言えば、フランス語圏やドイツ語圏向けに無理に現地語対応をする必要は、少なくとも初期はありません。フランス2.3%、ドイツ5.4%と一定数はいますが、英語の出品でも問題なく買ってもらえています。限られた時間とエネルギーは、まず英語圏という主戦場に集中投下するのが効率的です。
英語圏が主力という事実は、出品の”言葉づくり”の優先順位も教えてくれます。タイトルに入れるキーワード、商品状態の説明、コンディションの表現——これらをまず英語圏のバイヤーが探しやすく、安心できる形に整える。翻訳の精度や自然さも、主力が英語圏だと思えば力の入れどころが明確です。AIに任せるにしても、「誰向けの英語か」を意識して指示するだけで、刺さり方が変わってきます。
5. 国によって「利益率」がこんなに違う
件数だけでなく、利益率に注目すると別の景色が見えます。イギリスは利益率34.1%、シンガポールも31.0%と、平均(20%台前半)より明確に高い。一方でスイスは15.2%とやや低め。
同じ商品でも、どの国のバイヤーに届くかで利益率は変わってきます。送料・関税・バイヤー層の違いが効いているのでしょう。ただし販売数の少ない国は数字が振れやすい(台湾の例)ので、母数の大きい国の傾向を重視するのが正しい読み方です。
この”国ごとの利益率の差”は、知っておくと心の余裕にもつながります。たとえば利益率が低めの国の取引が続いても、「この国はもともとそういう傾向」と分かっていれば、自分のやり方が悪いのかと不安になりすぎずに済む。データは、判断の軸であると同時に、メンタルの支えにもなります。物販は数字に振り回されやすい仕事ですが、自分の実データという”地図”を持っていれば、目先の一件に一喜一憂せず、淡々と続けられます。
6. 「単価」が高いのはカナダ・日本
平均売価で見ると、カナダが$1,397、そして日本(国内)が$1,720と高単価です。カナダは件数も多く、単価も高い”おいしい市場”。発送先として軽視できません。アメリカの陰に隠れがちですが、カナダ・オーストラリアといった”英語圏の準主力”を丁寧に拾うことが、地味に効いてきます。
単価が高い国が分かると、高額機を仕入れたときに「どの国に届きやすいか」のイメージも持てます。もちろん最終的に誰が買うかはコントロールできませんが、傾向を知っているだけで仕入れの判断材料が一つ増えます。
ちなみに、単価の高い国=必ずしも利益率が高い国ではありません。日本国内は単価$1,720と最高でも利益率は21.5%、イギリスは単価$916でも利益率34.1%。「高く売れる」と「儲かる」は別物という、物販の本質がここでも顔を出します。単価と利益率、両方をセットで見る癖をつけたいところです。
7. 実は「日本国内」も4.7%いる
意外に思うかもしれませんが、配送先が日本国内のバイヤーも全体の4.7%います。しかも平均売価$1,720と最高クラス。これは国内の転送業者経由や、日本在住の外国人・プロの需要などが含まれます。「輸出」と言っても、買い手は必ずしも海外在住者だけではない、というリアルです。eBayという世界最大級のプラットフォームに出すからこそ、こうした多様な需要を拾えるわけで、国内のフリマアプリだけでは出会えない買い手に届くのが、輸出の強みだと改めて感じます。
8. このデータをどう活かすか
販売先が見えると、運用の最適化ができます。ぼくの実践はこうです。
- 主力(アメリカ)の関税・送料設定を丁寧に整える(ぼくは基本の送料は国ごとに変えず、アメリカだけ関税設定を別にしています)
- 発送は速さと信頼を重視してDHL一択。主要国に確実に届く体制が、評価とリピートを生む(→ 国際送料の考え方)
- 紛失・地政学リスクの高い国(ロシア・メキシコなど)は除外してトラブルを未然に防ぐ
もう一つ、ぼくが意識しているのは主要国の祝日・セール時期です。アメリカの感謝祭〜年末商戦のように、主力市場が買い物モードになる時期は出品や価格を意識する。販売先が分かっていれば、こうした”市場のカレンダー”も読めるようになります。
「どこに売れているか」を知るだけで、力の入れどころが明確になります。なんとなく全方位に対応するより、主力市場に最適化するほうが、結果的に評価も利益も伸びます。
よくある質問
Q. これからeBayを始めるなら、どの国を狙うべき?
狙う、というより”主力に最適化する”が正解です。全体の4割がアメリカ、6割が英語圏なので、まずは英語の出品とアメリカ向けの設定をしっかり整える。それだけで売上の大半をカバーできます。
Q. 発送できない国はありますか?
あります。紛失や地政学的リスクの高い国(ロシア・メキシコなど)は、ぼくは除外しています。安く売れても、届かずにトラブルになれば評価も利益も失います。”売らない判断”も立派な戦略です。
Q. 国別のデータはどうやって取るの?
eBayの取引データ(販売レポート)に配送先国が記録されています。これをCSVに落として集計すれば、自分だけの販売先ランキングが作れます。自分のデータが貯まったら、ぜひ一度集計してみてください。
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まとめ:売り先を知ると、戦い方が変わる
573件のデータが教えてくれたのは、アメリカ4割・英語圏6割という明確な現実でした。日本のカメラは世界中に買い手がいますが、力を入れるべき主力市場ははっきりしている。それを知っているかどうかで、出品の作り方も発送の整え方も変わってきます。多くの初心者は、ここを知らないまま”全方位”に労力を分散させて、なんとなく疲れてしまいます。でも実際には、力を入れるべき場所は明確に偏っている。その事実を知っているだけで、同じ努力でも成果が変わってきます。
「何となく世界に売る」から、「どこの誰に売れているかを踏まえて売る」へ。データを味方につければ、輸出はもっと戦略的になります。
そして何より、これは”ぼくの”データであって、”あなたの”データではありません。扱う商品やジャンルが変われば、売れる国の比率も変わってきます。だからこそ、ある程度取引が貯まったら、自分の販売先を一度集計してみてください。そこにあなただけの戦略のヒントが必ず眠っています。ぼくも最初は感覚で売っていましたが、データを見てから運用が一段クリアになりました。”想像で語る”のをやめて、”数字で確かめる”。それだけで、輸出は驚くほど戦略的な仕事に変わります。
この記事を書いた人:Kai
eBay輸出歴5年、累計2,000個以上を販売する現役セラー。中判フィルムカメラを中心に43カ国へ販売。想像ではなく実取引データで語る発信を心がけています。


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